
音楽の歴史には、すべてが一変する瞬間があります。ジミ・ヘンドリックスとジム・マーシャルの出会いも、そうした瞬間のひとつでした。ギターという楽器の表現を塗り替えたギタリストのジミ・ヘンドリックス。そして、そのサウンドに文化を動かすほどの力を与えたジム・マーシャル。その二つの力が重なったとき、現代音楽は少しずつ変わっていったのではなく、一気に前へと進みました。
あのとき生まれたエネルギーは、今もなお受け継がれています。レガシーとは、遠くから眺めるものではなく、自らその中へ飛び込んでいくもの。そうした感覚を持つギタリストたちの中で、そのエネルギーは今も生き続けています。そしてZach Person(ザック・パーソン)もまた、そのひとりなのです。 ザック・パーソンとジミ・ヘンドリックスのつながりは、決して偶然のものではありません。Experience Hendrixツアーに参加し、ヘンドリックスファミリーとも親しい関係を築いてきたザックは、そのレガシーをすぐそばで受け継いできました。そこにあるのは、ヘンドリックスから受けた単なる影響ではなく、近い距離で育まれた関係性であり、信頼であり、実際にその中で積み重ねてきた経験です。さらにMarshallとの関係も続くザックは、この物語が始まった場所のすぐ近くに立つ、きわめて特別な存在と言えます。
映像の中でザックが立っているのは、シアトルのワシントンホールです。その姿からは、彼とこのレガシーとの結びつきが確かなものとして伝わってきます。ジミ・ヘンドリックスの歩みが始まったこの街では、彼の時代からNirvanaやPearl Jamのようなバンドまで、世代を超えて音楽を形づくってきました。ヘンドリックスの影響は、過去のものとして語られるだけではありません。シアトルという街のカルチャーの中で、今も生き続けているのです。
ジミ・ヘンドリックスが初期に立ったステージの一つであるワシントンホール。そこには、今も歴史の気配が色濃く残っています。部屋にはそこで生まれたエネルギーが残り続けるとザックは語っていますが、この場所に立つと、その言葉にも自然とうなずかされます。まだ何者でもなかった頃のヘンドリックスの気配や手探りの日々、そしてやがてすべてを変えることになる始まりの火花。そんな瞬間が、今もここに残っているように感じられるのです。 多くの人と同じように、ザックにとってもヘンドリックスとの出会いは「Purple Haze」でした。この曲を初めて聴いたとき、ザックは頭で理解するより先に、心と体が反応したと言います。そうした直感的な反応こそが、ヘンドリックスらしさの本質でもあります。理屈を超えて感覚に届くこと。音楽において本当に重要な判断は、いつもそうした直感から生まれるのです。
ジミ・ヘンドリックスを特別な存在にしていたのは、革新性だけではありません。サウンド、テクニック、パフォーマンス、そして機材が、ひとつの表現として結びついていたことです。Marshallのアンプにファズやワウ、モジュレーションを組み合わせることで、彼はわずかなタッチにもダイレクトに反応する音のシステムを生み出していました。ボリュームを少し絞ればクリーンに、上げれば深く歪んだサウンドへ。そのすべてをリアルタイムでコントロールしながら、豊かな表現力と危うさ、そして精密さをあわせ持っていたのです。 そうしたバランス感覚は、ザックのプレイにもはっきりと表れています。彼の演奏には、フィジカルな力強さとパーカッシブな鋭さがあり、だからこそリズムとリードを無理なく行き来することができるのです。彼が受け継いでいるのは、ヘンドリックスのサウンドそのものではなく、ギターを一つの役割にとどめないという発想です。 そうした感覚の中心に、今もMarshallのアンプがあります。ザックが初めてフルスタックで演奏したとき、強く感じたのは音量だけではなく、そのスケールでした。音の輪郭やニュアンスを損なうことなく、空間全体へと音が人がっていくような感覚。まさにそれが、ヘンドリックスの演奏に広がりと生々しさをもたらしていたのです。
Acton IIIと1959 JMH Half Stackも、まさにその発想を受け継いでいます。優れたトーンとはキマりきったものではなく、プレイヤーの手元に応じて反応し、変化しながら、豊かな表情を生み出していくものです。ジミ・ヘンドリックスとMarshallのパートナーシップをあれほど特別なものにしたのも、まさにその考え方でした。そして、その本質は今も変わることなく受け継がれています。 ヘンドリックスは、ギターとファズペダル、そしてMarshallのアンプで音楽のあり方を変えました。この組み合わせが持つ力は、今もなお色褪せていません。それはノスタルジーとしてではなく、今も音楽を形づくるひとつの基準であり続けているのです。 ザック・パーソンがActon IIIと1959 JMH Half Stackのアーティストとして起用されたのも、まさにそうした理由からです。彼のプレイには、その哲学を自然に受け継いでいることが表れています。それは、ヘンドリックスから影響を受けたというだけではありません。実際に積み重ねてきた経験があり、ヘンドリックスのレガシーとの近い結びつきがあり、さらにMarshallのエンドーサーとして歩んできた背景もあります。ザックにとって、過去は完成されたものではありません。今も動き続け、さらにその先へつないでいくものとして捉えているのです。








